ゆとりはお呼びでないですか?

平々凡々におめでたく暮らす

【無職の頃に3万6000円かけて「前世に行ってきた」ときの話】

 

この間、すごいタイトルの本を見つけました。

 

 

 

 

宇宙にオーダーするだけで、理想の彼と出会える本 (SB文庫)

宇宙にオーダーするだけで、理想の彼と出会える本 (SB文庫)

 

へえ、宇宙に彼氏を注文すると…。

 

なんか、全然よくわかんなくて、意味不明すぎて、……というのはウソで、ホントは痛いくらいに内容がよく想像できたので、イライラして「これ買ってる人とは仲良くなれないだろうな」なんてTwitterでつぶやいた次第です。

 

というのも、私もかつて、こういうスピリチュアルっぽいのとか占いとか啓発系セミナーにお金を費やしていた頃がありました。

 

卒業後、社会人になって即無職になったときに、私が一番最初に起こした行動といえば、

 

1時間3万6000円コースの「前世療法」を受ける

というものでしたからね。

 

定職がないどころか貯金も35万しかなかったのに、なぜこれに申し込んだかというと、

前世の自分のトラウマを知って、現世に活かそう思ったからです。

 

 

大事なことだからもう一度言いますね。

 

 前世の自分のトラウマを知って、現世に活かそうと思ったからです。

 

職をなくし、希望もなくし、なにもなかった私は、とにかく前世を知れば今の自分のやるべきことがわかると思ってました。

 

で、前世療法を受けるために予約して前払いして1カ月ほど待ち、当日、わくわくしながら恵比寿へ。

 

セラピーを受ける場所は、照明の暗いマンションの一室で、ちょっとふくよかなおばさま(施術者)が出てきて、一緒にハーブティーを飲みながらしばらく話しました。

 

「今、悩みごとはあるの?」

「恋愛はどうなの?好きな人は?」

「仕事はうまくいってる?」

 

もちろん、全部答えました。

ベッド誘導されたのでそこに横たわって目を閉じると、おばさんが水が流れる音…めっちゃ音の性能がいい音姫みたいなBGMを流し始めました。

 

おばさん「 大きく息を吸ってー、吐いてー。また吸ってー、吐いてー。吸ってー、吐いてー。あなたは意識の深くにー、落ちていきますー。

 

さあ、今、あなたの目の前には何が見えますか?」

 

わたし「………えっ?」

たまげました。

だって、何も見えないから。

そりゃあ当たり前ですよね。目を瞑っているだけなんだから。見えるも何も、目の前は真っ暗です。

戸惑う私に「はじめての人はみんなそうですよ」って言いながら笑うおばさん。

 

おばさん「ふふっ、あなたは今、意識のふかーいふかーいところにきています。ゆっくりとー階段をくだっていくとー、そこには扉があります。

さあ、その扉を開けて!

…目の前には何が見えますか?」

 

え?扉?なにそれ…と、もう戸惑いしかなかったんですが、おばさんの圧力が強くて黙っていることしかできません。

 

おばさん「あなたはーとてもー心地よいところへと向かってます。扉を開けると、優しい風が吹き抜け、あなたの頬をなでるでしょう。

 

はい、あなたは自分の意思で扉を開けました! 目の前には何が見えますか?」

 

 

 

もうね、ひたすら意味わからない。

わからないんだけど、ふたりきりの空間で初対面のおばさんにそんなこと言えるほどメンタルが強くなかった私は、こう言うしかありませんでした。

 

わたし「え、えっと、草原にいる…っぽいです」

 

薄眼を開けておばさんの表情をみたら、やさしく微笑んでいました。

そこからはもう、めくるめく前世モードへ。

 

おばさん「草原ですねー、そこはとても気持ちがよいところですねー。

それでは自分の身体を見てみましょう。あなたはどんな服を着ていますか?」

 

わたし「えっと…布みたいな…」

 

おばさん「それは、貧しいですね。靴は履いていますか?」

 

わたし「あ…履いてないみたいです」

 

おばさん「悲しい気持ちになりますね。あなたは何という名前ですか?」

 

わたし「…………え。(小林だよ!もうやだこんなの)」

 

おばさん「安心してください、ゆっくり思い出していきましょう。それではあなたの身体は女性ですか?男性ですか?」

 

わたし「女性です(だって女性だし…)」

 

おばさん「女の子ですね、あなたは何歳くらいですか?」

 

わたし「えーと…(永遠の)17歳くらいですかね…」

 

おばさん「17歳でぼろい服を着て裸足だったんですね…あなたの名前はなんですか?」

 

わたし「え…っと…る、ルビーです!(なに、ルビーって、ばかなの?なんなの?)」

 

おばさん「いいお名前ですね。それではルビーさん、あなたはどこの国にいますか?」

 

……とまあ、こんな感じであまりにも辛すぎる1時間が経ちました。

 

 

結果、私は

 

幼い頃は裕福な家庭のお嬢さんでドレスを着てたけど、親が他界してから施設に入ることになり、貧乏になってボロい布きれをまとい、人生の険しさを知った古代ローマ人少女、のルビー17歳

 

という謎の前世になりました。

いや、もうね、納得できないことだらけだから。

1時間3万6000円もかけて作られた前世が、小学生が自由研究で書いたおとぎ話よりもうさんくさいなんてことないよ。

 

絶望的な気持ちになって、終わってからまたまとめのカウンセリングとしておばさんとハーブティーを飲むわけです。

 

おばさん「あなたは恵まれない人生を経験したけど、そこからきちんと這い上がった前世だったの。今のあなたも仕事をなくして辛いだろうけど、きっと大丈夫って前世のあなたがそう伝えているのね」

 

なにそのこじつけ…!

仕事をやめたばかりだということは最初のハーブティーを一緒に飲んでいる時間で話していました。

 

なんかもう、お金のムダ遣いしたなって涙が出るくらいだったんですが、なぜだかおばさんは私の涙をポジティブに解釈し、

 

おばさん「大丈夫よ。ルビーもそう言ってる!あなたなら、きっとやれるわ」

 

と励ましてくれました。

 

占いやスピリチュアル、前世、啓発系セミナーなどのものを娯楽で楽しむのはよくても、すがってはいけないのだということを、しかと学びました。

 

そう考えないとあの3万6000円に失礼なので。

 

前世を知って現世に活かそうとするヒマがあるなら、現実に向き合って就活したほうが有意義なのと同じように、

彼氏がほしいと宇宙にお願いするヒマがあるなら、ムダ毛でも抜いていたほうがよっぽど恋に近いと、自信をもって言えます。