ゆとりはお呼びでないですか?

平々凡々におめでたく暮らす

何かと話題になっている「ナルシスト採用」の説明会に参加したときの話

 

昨年の夏ごろでしょうか。就活を放棄していた弟と、先の見えない生活を送っている姉の私は、偶然ネットで「ナルシスト採用2014-2015」というものを見つけて、一緒に説明会に参加することになりました。

 

というのも、その企画の対象者イメージがとても面白かったのです。 

  1. 自意識過剰すぎて、狂いそうで、どうしていいかわからない。
  2. 自分をおざなりにして、人生など語れない。
  3. 社会のシステムや制度に馴染めず、就活を辞めた

…なんだかこう、我のかたまり!という感じがしますよね。いったいどんな人が参加するのだろうと、半分興奮、半分恐怖で足を運びました。

正直なところ「ビバ☆俺!」「マジ☆俺!」的なギラギラ系の人たちがたくさんいるのかなぁ、なんて想像したり。

 

f:id:mtdrik:20150207005354j:plain 

説明会は、この企画の発案者である若新さんのお話を聞いたあと、近くにいる人とグループを組んで意見交換をし合うという流れでした。そのときの話が面白く、刺激的だったのでメモしてあります。

ちょうど保存してあったデータを見つけたのでまとめて載せておきます。

 

◆今の若い世代には「ほしいもの」がなくなっている 

 

若新さん「今の僕たちの親世代は、社会全体を豊かにしようと盛り上がっていた世代。90年くらいから日本の成長が止まっているんです。これはよく言われる“失われた20年”というものです。このなかで失われたものは“豊かさ”ではなく“成長”です。僕らは生まれたときから経済成長を終えた時代にいて、豊かな環境があったんです

 

たしかに、ゆとり世代は「生まれたときから不景気だった」なんて言われていますが、実際に不便な思いをしたり貧困を体験したりしている人をほとんど聞いたことがありません。ネットも当たり前のように使っていたし、情報にも恵まれていました。

 

若新さん「僕も高度経済成長期に生まれていたら、こんなにナルシストになってなかったと思います。今は髪の毛を切りたくないとか言っているけど、もし隣の家が洗濯機を持っているのに、自分の家が手洗いをしていたら、髪を切ってでも就職して洗濯機を買うために働いていたと思います。

 ただ、そうじゃなかった。僕たちは生まれたときからなんでもある時代だった。だから今はほしいものが外側に見つけられなくなっている。激しい成長の見られる時代は終わってしまって、著しくは成長していかない時代のなかで、僕たちはだらだらと生きていかないといけないんです。

 だから、日常のなかで目標や何かを見出さないと、僕らは頑張る意味がないんですよ」

 

「成長」が望めず、「ほしいもの」もなくなってしまった今、「お金」だけをモチベーションにして生きていくのはあまりにもしんどい。

今の若い世代の人たちが働くなかで「やりがい」や「自分にしかできないこと」にこだわるのは、こういった背景が理由なのかもしれません。

 

◆「社会性」ってなんだろう

それから、近くにいた人たちとグループを組んで「社会性」という漠然としたテーマで話し合うことになりました。

 

参加者のなかには「大学を中退して大学院に進学したけれど、最終学歴が高卒だからなかなか雇ってもらえない」という女の子や、「いじめが原因で高校を中退して大学に行ったけど、やっぱり高校中退というと色眼鏡でみられる」といった男の子がいました。

 

女の子「私は最終学歴が高卒で、勉強をしたかったから高卒のまま大学院に進学しました。まだ卒業していないから最終学歴は高卒のままなんです。だから企業に面接にいくと、それだけで“社会性がないね”って思われて雇ってもらえない」

 

男の子「人と少し違う生き方をしていると、社会性がないって見られやすいよね。世間的には違いを認めましょうとか、個性は大事ですって言われているけど、実際は自分たちの会社ではそういう社員を抱えたがらないっていうところが多いと思う

 

女の子「結局社会性っていうのは、もとからある会社に適応しろっていう部分が大きいのかもしれないね。だから私たちみたいにそこに適応できない人たちは、新しい居場所をつくるしかない」

 

男の子「そう考えると、会社から与えられた目標を自分の目標としてこなすことのできる人が“社会性がある”って認められるのかもしれない」

 

初対面かつ名前も年齢もわからない関係のなかでも、ばんばんと意見が飛び交っていました。

 

◆ナルシスト採用の人材は「当たり前とされていることに疑問を持つ人」

話を聞いていくなかで感じたことは、ナルシスト採用の説明会に参加した人たちは、はみだしているぶん、人一倍自分と向き合い、疑問を持ちながら生きてきた人たちだということです。

世間一般で浸透している価値観をそのまま受け入れるのではなく、同じスーツを着ることや、ESを手書きで書くことに疑問と居心地の悪さを感じてきた、という人が多い印象でした。

 若新さん「僕はナルシスト採用に参加する人たちに、社会性を身に着けてもらいたいわけじゃないんです。ナルシストは自分だけに意識が向かっているだけではなくて、自分と社会がどう繋がっているのかを複雑に考える人だと思うんです。でも、一般に行われている就活ではそこの部分を考えさせない。平均化されたものからはみ出す人たちは、面倒くさくなってはずされてしまう

 

若新さん「自意識過剰な人…つまりナルシストは、他人を意識しているし、自分と他人のバランスについてもよく考えている人が多いと思うんです。社会のことを盲信できるような人たちではないからひねくれているように見える部分もあるけど、そのぶん社会に枠組みに対しても敏感なんじゃないかと思います」

 

若新さん「日本人がグローバルになれないのは、違う文化の人たちとコミュニケーションがとれずに、どう対応したらいいのかわからないからです。

決して英語が話せることがグローバルなわけではありません。だからこそ、これからは変わっている人や物事を受け入れていかないといけないと思うし、そのきっかけのひとつとして必要なのが“ナルシストな人材”だと思うんです」

 

「人とは違うもの」や「個性」を面倒なものとして排除してきた社会の起爆剤になるのがナルシスト人材なのでは、とおっしゃっていた若新さん。そう考えてみるとナルシスト採用は、もっとも進んだ就活サービスなのかもしれません。

 

◆仕事に意義を見出すということ

 若新さん:「ナルシスト採用では、自分にどれくらい自信があるのかをアピールしようという話ではありません。それよりも、今まで抱えてきた疑問を素直に口にすることが大事で、それまで問題にならなかった「当たり前のこと」を見直して、社会を作り直していくのがナルシストなんじゃないかなって思います。

 

集団のなかで自分が頑張る意味を明確にして何のために働いているのかを考えないと、どんどん“自分”というものが希薄になってしまう気がします

 

人よりも自分に向き合うことを続けてきた“ナルシスト”だからこそ、他人から与えられる目標だけでなく、自分で自分の仕事に意義を見出していくことができるのかもしれません。

 

さて、巷で叩かれたり眉をひそめられたりしているナルシスト採用・アウトロー採用ですが、内定者も出ているそうです。

実際に雇用した会社の方とのインタビュー記事も掲載されていて面白かったのでリンクしておきますね。


新入社員の価値は「あつれき」をもたらすこと ~ナルシスト採用参加企業に聞く(後編) “マネジメント”からの逃走 第18回:PRESIDENT Online - プレジデント

 

それから、ゆとり世代のホンネを発信するウェブメディア、ハナクロさんのリンクも!


就活に生きづらさを感じるゆとり世代の希望「ナルシスト採用」って? - ハナクロ